食材を活かし、独創性を加えて完成イメージを創出

2011年01月01日
 
 

Interview
Close up パン工房 風見鶏
福王寺 明 シェフ

 




食材を活かし、独創性を加えて完成イメージを創出。

それを技術で具現化する事が商品開発だと思う。

他店にないオリジナル商品でお店を埋めつくしたい。



 

Q天然酵母との出会いと

その当時の話を教えて下さい

 

天然酵母と出会ったのは、今から15年前の1998年でした。当時、天然酵母には「酸っぱい」「ボリュームがでない」「翌日は固くて食べられない」というネガティブなイメージがつきまとっていました。そんな中、ホシノ天然酵母に出会いました。顆粒の酵母と水で培養した「生種」を入れるとパンの味が良くなり、イースト臭がマスキングできる点を活かして、イーストと併用する形で使いはじめました。しかし、天然酵母は美味しいパンができるというハイリターンな側面がある一方、ハイリスクを伴うものでした。生地の発酵に6~16時間を費やすのに、膨らまない時がありお店に出せない事もありました。またパンの内層が均一に仕上がってしまうので、バゲットやブリオッシュのように特徴的な食感も出ない。特に、天然酵母の管理手法さえ確立されていなかった時代でしたから、季節の変わり目や梅雨になると失敗が目立ちました。今でこそ天然酵母の管理にはアルコールで殺菌できない雑菌を除去するため、器機をキッチンハイターのような次亜塩素酸ナトリウムで完全消毒しなければならない事がわかっていますが、当時の消毒の常識では対応できなかったのです。管理の安定化を目指してメーカーさんとコミュケーションを取る一方、確かなリターンを求めて試行錯誤も繰り返しました。そして最初に辿り着いたのが、ホシノ天然酵母を含んだパートフェレメント(老麺)。前日に残しておいた生地を2~3割練り込んで、旨味を補填する製法を全てのものに取り入れると、明らかに違いが分かるほど味が向上したのです。

 

 

 

Qリニューアルオープン

からこれまで、

順風満帆でしたか?

 

 

2003年、東浦和駅前から現在の店舗に移転しました。駅から離れた土地でしたが、当時はそれでもお客様を引っ張れると思っていました。しかし現実は厳しいものでした。パン屋では移転した時に味が落ちるとよく耳にすると思いますが、まさにその「移転病」にかかってしまったのです。理由は2つ。移転を機にフェルメント(※1)を導入してルヴァンリキッドを使ったパン作りに挑戦したことと、天然酵母を使用したパンを全面に出した商品展開にシフトしたことです。

 ルヴァンリキッドの失敗に関しては、自分が甘かったとしか言いようがありません。講習会に参加してすぐ導入を決めたのですが、結局は知識不足でノウハウ無しですから、正しく管理できるはずがありません。酢酸菌が増え、まるで接着剤のボンドのような臭いになったこともあり、焼けばケービング…。今でこそフェルメント無くしてパンは作れませんが、当時はこの機械の使用を中止して移転前の製法に戻しました。天然酵母については、さらに苦い想い出があります。【天然酵母】と書かれたPOPを掲出していたのですが、それを見たお客さんに・・・



続きはベーカリーパートナー8号でご紹介。

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パン工房 風見鶏
福王寺 明 シェフ
Prof ile
埼玉県出身。1977年からパンの世界に興味を持ち修行を始める。1987年、埼玉・東浦和で『パン工房風見鶏』を開業。2003年、店舗を現在の場所に移転。自身が開発した「ホシノ小麦粉種」を使い、天然酵母の第一人者として製パンセミナーの講師を務め、プロ向けの講習会で活躍中。近年、その活動は日本にとどまらず台湾へと拡大し、ますます活躍の場を広げている。